自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

当ブログ年度別アーカイブのリンク一覧

本ブログ「自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージは計162本からなる保存版です。

ブログ形式は1ページ目=最新投稿日時の掲載記事、月別アーカイブも新→旧順のリスト表示となるゆえ、書物と同じように書き始めた文章から読み進めることがなかなか困難ですが、以下、年度別記事一覧のリンク先となります。

 

 ◆ 2003年(1号から24号までの24本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2003

◆ 2004年(25号から45号までの21本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2004

◆ 2005年(46号から60号までの15本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2005

◆ 2006年(61号から67号の7本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2006

◆ 2007年(68号から71号までの4本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2007

◆ 2008年(72号)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2008

◆ 2009年(73号から144号までの72本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2009

◆ 2010年 (145号から156号までの12本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2010

◆ 2011年(157号から162号までの6本)

https://sawaguchitomoya.hatenablog.com/archive/2011

162. 原発不手際の余波

無性にぜんざいが食いたくなった。
古い話だが、カッセレス県の小さな村役場の前庭で白っぽい小豆を見た記憶をたどり、やっとまちの乾物屋で買い求めてきてもらえた。煮込むと色は白っぽいが味はまさに小豆だ。欲望を満たした本能的落ち着きを堪能することができた。

被災地の皆様の不便とは比較にならない些細なことだが、小豆が簡単に手に入らなくなったのも文句なく東電の原発事故処理の不手際が唯一の原因だ。

EUでは放射性物質を含む日本製品輸入禁止策をとっている。したがって、スペインでも原則として日本からの食料品は輸入に制限をかけている。それでも一品につき90ユーロ(約1万円)の検査費を支払えば輸入商品や個人向け小包を受け取れないことはない。
しかし、しかし。
スーパーの100円均一コーナーで売っているおかきや、栗まんじゅう・大福・餅・紅しょうが・キュウリのきゅうちゃん漬けでも送ってもらおうものなら検査費だけで約5万円。プラス郵送料、物品輸入税+消費税+ほぼ強制的に利用させられる代行業者への手続き代。これを快く支払える人はいなかろう。

この措置は、最初は6月で打ち切る予定だったらしいが、日本側の処置不手際で9月まで延長されてしまった。日本の原発関連ニュースをみていると、どうも再延長されるんじゃないかと怒りと不安感が募るばかりだ。

ぜんざいやおせんべいぐらい無事届いておくれよ。

161. 広場の占拠 -15M-

5月15日(15M)、突如マドリーの中心「太陽の門」広場が群集によって占拠された。次いでバルセローナ、セビーリャなどの地方都市へ波及伝播するという社会現象を巻き起こし現在に至る。

エジプトのジャスミン改革にならったのか、FacebookTwitter での呼びかけからはじまったので共鳴者の集合はスピーディーで、媒体の性質上、若者が主体となった。
都市の中央広場を占有した群集はときには万を超え、テントや寝袋持参で日夜居座ったため、一名「アカンパーダ acampada 」とも呼ぶ。
それは、今年のエジプト革命や19世紀のフランス革命のように操縦者の暗示のままで動いては群集心理により個人の人格を喪失すると自覚する者の集まりだった。

彼らはアルコールの持参、暴力行為厳禁に賛同した上、現実社会の矛盾や不満を話し合う。他人の思いが伝播し、相互に共通感情にひたれる場を設けることは、形骸化したデモクラシーを皆で見抜くきっかけとなるだろう…というのが「もはや真の民主主義を! Democracia Real Ya! 」をスローガンにしたアカンパーダの主旨のようだ。

かくして広場に足を向ける人の数は日増しに膨れ上がった。自分の給料と物価上昇の差を訴える給仕、奨学金制度の不備を訴える学生、長期失業者、外国人季節労働者……。

労働条件の欺瞞など千差万別の要望や訴えは口頭や貼り紙でもアッピールされている。
ちょうど5月22日が統一地方選挙だったため、アカンパーダ運動の立ち上がりから一週間は「二大政党には投票するな」の文字が目についた。だが、すでに古い政党制と化した二大政党制の欠陥や、多極共存型デモクラシーでも政治は安定するというような具体的な言及はなされていなかった。

「少数派の意見を無視する多数決デモクラシーには反対」「投票権は権利として行使し白票を投ぜよ」のアッピールにも、英米の多数決デモクラシー以外にも少数派の協調的行動が成熟すれば合意デモクラシーが実現可能であることの論理展開がみられなかった。

NATO軍の無差別空爆は止めよ」の訴えも弱い。
USAは2001年9月11日以後デモクラシー帝国に変貌してしまった。自国の単独行動であるべき事柄を他国に要求する。内にはデモクラシー、外へは米国的デモクラシーを強制する帝国主義と化している。だからNATO加盟国も外に向かっては帝国主義化した、という分析の言及がない。

老外国人としては日常的な問題に意見する資格も資料もないので上記2、3点をひろってみた。しかしどのアッピールをとってみても、人々を集めるための情報媒体にSNSという即興的意志発信メディアを使っているためなのかどうか、断片的で整合性を疑うものばかりで論理的展開を欠く。

また実際の場面をライブ動画などで観ても、矛盾や不満を訴えることのみの連続である。
立ち上がり月日を記念に15Mと名づけた運動は第一歩を踏み出したばかりだという。第2ステップ名は19J(6月19日)。集団がみなで力を合わせてこの境遇から抜け出そうという能動的な動きをみせてくれるのだろうか。今後に期待する以外にない。

大衆運動では、群集の千差万別の非合理性にベクトルとしての方向とエネルギーをもった組織化の過程が大問題となる。スペイン発のインターネット革命社会が実現するかも、と注目している。


【15M info】
http://www.democraciarealya.es/
http://madrid.tomalaplaza.net/
http://www.facebook.com/home.php#!/SpanishRevolution?sk=info

Spanish revolution-15M, "It´s time to fly" - http://youtu.be/Vr9BTyug4FA

160. 風評と口調

東日本大震災2週間。お亡くなりになられた数多くの皆様方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆々様に心よりお見舞い申し上げます。

若かりし頃、この度と同じように東北地方が津波に襲われたことがある。汽車を乗り継ぎ3日目にようやく釜石に着いたが、目的だった津波の高さ測定どころではなかった。その惨状に直面し、後片付けのお手伝いに2泊3日を投じた。
当時は靴底もお粗末で、釘の踏み貫きに気を配りながら素手は切り傷と木片の刺さりで膨れ上がった。手助けは消防団員が中心で、買い占めや風評被害のようなものはなかったように思い出される。

今回の災害では駆けつけるわけにもいかず、期間限定の各局のライブストリーミング配信にしがみついている。感動したTBS放映はそのサービスを早くに終了。NHK総合テレビは今日が最後の日だった。明日からは「がんばれ福島」ラジオ放送だけがたよりだ。

福島放送はアナウンスが元気よい。長崎大の教授だったか、招かれた専門家も実に明快で、聴衆に勇気と活力を沸き立たせてくれる語り口だった。
それに引き換え、NHKテレビは風評被害の発信元ではないか?!と感じてしまうほど私は憤慨しながら見入っていた。とくに21時台の放映とクローズアップ現代の口調は視聴者に恐怖心と不安感を植えつけるかのようだった。ゲストの専門家が「心配しなくとも大丈夫」と強調しているにもかかわらず「妊婦は?」「乳幼児は?」と追求し、「……ともありうる」というような歯切れの悪いネガティブな言葉を専門家の口から殊更引き出そうと仕向ける―――このあたりから不安の風評が増幅されているように思えてならない。

被害をもたらす放射性物質もしかり。風向や降雨の関係でシーベルト数値は変動もするし、測定場所も少し移動したらシーベルト数は大きく増減すると専門家が明言しているのに、同じ席で、某所でマイクロシーベルトの最高値を記録しましたとわざわざ表示言及する。その態度を私は理解できない。
野菜にしてもしかり。出荷制限された品目を強調するだけではなく、これこれの品物はだいじょうぶですと前向きの心遣いがなぜできないのか。
いまやニュースは数十分のうちに世界をかけめぐる。わしはこの2週間のNHK放送で失望と違和感に苛まれている。

万一、できるだけ細部にわたり客観的な放送と主張をするのであれば、復興に向けて精神的に立ち直った人々だけではなく、どん底で苦しみに打ちひしがれている方々や災害死、負傷された方なども同等に放映すべきだ。被災地の真実の苦しみと痛みを共有し、その被災さに耐えうる強い心を小児の頃から育成に努めるべきだ。そうすれば風評被害の現象も、「こうしなさい」と命令されなければ乳児に乳も飲ませられない母親も、主体性不足で情報を選択できずウロウロする大人も、自然なくなるであろう。

大震災と東電の原発事故で被災されたどなたも最大限がんばっておられるのに、その上がんばってくださいとはいえないが、学生時代の原発反対運動が不十分だったことがいま悔やまれる。

159. 素晴らしい対処

高速道路の制限時速が 110km/h 以下になった。リビア内戦などで原油価格の急騰に対する対応処置だ。
根拠として、例えばマドリーからスペイン北西部の都市ア・コルーニャまでの約 730km を 110km/h で走行すると、従来の制限時速 120km/h より5〜6ユーロ分のガソリンの節約になる……という論理のようだ。

スペインでは、片側二車線以上で中央分離帯がある高速道路は、特別の場所以外はすべて無料で、ほとんどの主要都市はこの高速道で結ばれている。
今回の速度規制が決定されてから一週間ほどですべての高速道の速度標示板を「110」に張り替えてしまい、昨日から実施に踏み切った。この迅速な対応は実にすばらしい。まさに生きた政治というべき絶賛ものだ。

スペイン人の常で自分に不都合なことは反対。タクシーを含め輸送関係者、野党も文句タラタラだ。が、考えてみれば、10分や15分到着が遅れても何の価値もないような長話をちょっと早く切り上げたら、十分に遅れは補填されるとわしは思っている。

最近はアジアといえば中国一辺倒でしょげていたところ、一昨日のテレビで内務大臣が「日本のような先進国でも最高速度は 100-80km/h だ……」と言っていた。久しぶりに耳にした「ニッポン」だったが、「万事手遅れ」の日本政治が頭をよぎると、嬉しいより恥ずかしさが先に立ってしまった。