自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

2004-01-01から1年間の記事一覧

45. 散歩

取材先の田舎道でおばさんやおじいさんの2、3人連れに出会うと「あっ。もうすぐ村だ」とホッとすることがある。 日没前のひとときを夫婦や友達仲間で散歩に出るのが古くからのスペイン社会の習慣だ。それぞれの体力にふさわしい距離と速度で雑談を交わしな…

44. 庶民事情の断片

昔からスペインの個人商店はよく入れ替わったものだが最近は特に目立つようになった。 2ヶ月間ほど家を空けている間に自分の生活圏というか、感覚的にスリッパで出かける範囲内でも「おっ。1年以上も続いたのについに閉まってしまったか」と意外な閉店。な…

43. 互角の戦いの行方

昔から神様も自分の住みかを手に入れるために相当な努力を払ったようだ。 奈良に都を移すとき、時の権力者・藤原氏は氏神を三笠山に鎮座させようとしたがすでに榎本明神(猿田彦)が住んでいた。そこで不比等は巧みに替地を与えて追い出してしまって藤原氏(…

42. 狂った普遍性

スペイン社会に反射させて日本社会を眺めてみると、スペインの方が普遍的で日本は特殊な社会といえるだろう。 比ゆ的に一言でいえば「ごめんなさい」と言うか言わないかだ。自分が弁償したり不利にならない失敗なら気楽にぺルドン(=パードン)と口に出す。…

41. ケ・アプロベッチェ ¡ Qué aproveche !

スペイン社会に盆栽を普及させたゴンサレス前々首相の右腕と認められていた男。いまは社会労働党選出のEU委員としてブリュッセルに籍をおいているが、かつて「選挙公約なんてものは、その場かぎりの思いつきみたいなもの…」と公言したことがある。 この春…

40. ニーニョ・コロン Niño Colón

スペインと英国は昔からそりが合わないようで、お互いに子どものけんかそっくりの嫌がらせをやっている。 つい先日もジブラルタル返還問題で渋ったイギリス人は、事あるごとに「スペイン人の冒険は金が目当て…」と動機の純粋性を疑っている。たしかに、外国…

39. 外からみつめて

外から日本を眺めているとしばしば気持ちの流れがドシンと岩にぶち当たる。先ごろもロシアの学校占領事件の実況放送を苦々しく見つめてきたが、事件がなんとも表現のしようすもないずさんさで一段落した。 テロ側(?)で生き残ったひとりの若い捕虜の取り扱…

38. ふつうのTVでも純スペイン製で観戦したいよ

今日はテニスコート大改造で測量にきていた監督に、アテネで女子ダブルスが日本に大勝したことを我がことのように威張られた。そしていつものことながら、言い古された次元の低い発明、真似論議から文明論にまで発展した。 「日本はまねて金持ちの国になった…

37. この夏

毎年8月になると思い出す事柄がある。 第二次世界大戦中、労働力として中国大陸や朝鮮半島から軍部によって強制連行というか拉致されて日本へつれて来られていた人々は10万単位で数えられるほどいた。 そのうちのほんの一部、八路軍の兵士が岐阜県の神岡…

36. 土用ニンニク

Brochetas (c) Tomoya Sawaguchi 2004 皮側へクリッと巻きこんだ歯ごたえのあるうなぎの蒲焼を夢みる暑さやなあ。日本には伝統的にそれぞれ旬の味があり、季節の移り変わりというか心に区切りをつけてくれるような生きるリズムというものができるよな。 どう…

35. 緑の枯れ葉

夏の味その1「メロンの生ハム添え」Melón con jamón (c) Tomoya Sawaguchi 2004 連日の日照りでこの一週間は毎日確実に少しずつ気温が上昇してきたようだ。 今日のお昼時、首都マドリーは39,3℃。近くの古都トレドは40℃強。日本でいえば盛岡ほどの緯度…

34. 庶民の誇り

自分のたちまわる部屋のテーブルの上や本棚、食器棚の横…と、どこにでも老眼鏡がころがしてある。全部で10ヶは超える数であろうが、まともな代金を支払って眼鏡屋さんで買った品は2ヶだけ。他はすべて100円ショップ商品で面白半分で買ったものばかりだ…

33. 民族と母語

先日とある祝賀会に招待され参加した。ほとんどがスペイン人で大学教授クラス。主賓は受勲した日本人名誉教授。およそ凡爺にはこのような会は性分に合わず、できるだけ辞退することにしている。 だがこの名誉教授とはかれこれ25年以上もの付き合いがあり、…

32. お互い生きるもの

先日サラマンカ大学へ留学希望という知り合いの娘さん一行といっしょした折、コーヒータイムで立ち寄ったエルナンサンチョ村 で挨拶を交わした話好きのおばさんが「4羽生んだんだけど、おととい1羽落として、2羽しかよう育てないんでね、今朝方また1羽落…

31. 差別ってなに?

先日Raulaさんから届いたメールを紹介します。 今日、家のドアの鍵が閉まらなくなり、近所の鍵屋さんに来てもらったところ、なんと外国の人! 外見ではちょっと色が黒くて、目鼻立ちがはっきりとしたおじさんで、アラブ系かな、南米系かな、って感じの人でし…

30. 熟しすぎかな

この春、帰国して、横浜の駅ビルにある某文化センターのロビーへ待ち合わせに出かけたら、なんと壁いっぱいに何段かの状差しが100ヶほどもあって、全部○○教室の受講者募集パンフだった。日本はまたずいぶんと習いごとが盛んなところなんだろうと驚いてし…

29. 匂いも臭いも好き好き

スペインを1ヵ月間ほどあけていた。マドリーの国際空港バラッハスに降り立ち、荷物受取場に入ったとたんに「はー。マドリーに戻ったんだ」と生き生きと感じたものだった。歯切れのよいスペイン語と馴染みっぽいスペイン人のつくりだす雰囲気などはもちろん…

28. 待つことを待ちたくなる心境

人・物事・順番などがくるのを望み、頼みとして時を過ごすことを「待つ」の意として岩波国語辞典には出ている。しかし望み、頼みがなかなかやってこないと「待ちわびて」イライラし始め、ついには「待ちぼうけて」しまいぼんやりとあきらめに近づく。 この段階ま…

27. 鍵

買い物に出てマンションの共同玄関に戻ってくると、すぐ真下の5階に住む高校1年になりたてのナタリアがなにやらチャラチャラ鳴らしながら駆け寄ってきて、「トモヤ! 私が開けてあげる!」と誇らしげに鍵束を振って見せてくれた。「おお、ついに鍵をもらえ…

26. 食べてこそ完結

スペインは狩猟のメッカで、英仏などからハンターがこの時期になるとけっこうやってくる。 彼らは猟場近くの国営ホテル(=パラドール)などに泊まりこみ、地元の案内人と犬を雇っておいて朝はゆっくりとコーヒーを飲み、婦人も20番の細身の銃を携えてさっ…

25. 通過すればよし

新年おめでとうございます。 新しい年を迎えるとわしなりに心の1つの区切り、節目として所感めいたものを頭だけでまとめてみる癖がある。その中で、いましがた頭に浮かんだやつをたとえ話的に放言させてもらうと、当世はどうも「その時その場だけを通過(ク…