自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

50. 悪は悪

久しぶりというか、2ヵ月間も乾き切っていた大地にこの春最初の雨が打ちつけてきた。日向くさい、なにか火薬のような刺激臭が鼻をさす。木陰に逃げ込んだ相棒はテニスラケットを脇の下でぬぐいながら言った。


イラクでイギリスの私設軍に参加していた日本人が殺されたか行方不明になったことを知っているか」

「日本人も金もうけのためなら思いのほか荒仕事に手を出すんだなあ」


彼の話しぶりでは、今回の英国警備会社の日本社員事件での日本政府の対応についてはどうも知らないでいるようで、まずはホッとした。


ローマの昔から傭兵が本当の戦闘員となった。かれらは奴隷から解放されるや荒稼ぎを狙って戦った。その軍隊の伝統がいまの外人部隊よ。外人部隊がカッコイイなんてとんでもない。

「トモヤも知っとるやろう。以前に市民戦争の記念日にUSAなどから、その当時の外人部隊員の生き残りがスペインへ来たときのことを。かれらは当時の友軍の老人たちからも歓待どころか、むしろ冷たく扱われたからなー。フランスの外人部隊に20年も住みついた男。そいつは化け物下士官よ…。あそこでは一期4年勤務すれば1000日ぐらいの刑期が帳消しになるんだから、受刑者や外人のごろつきのたまり場ってとこやなー。

まあ、アフリカのあたりで原住民を虐殺した張本人で下士官ならその上指揮もとれる。イギリスの警備会社という私設軍が高給で採用するはずよ」

言われるまでもなくそのあたりの状況の大略は知っていたが、だんだんと聞く方が苦しくなってきた。泥棒にも3分の理というが、1分の理も立たない同胞の悪行はいま流行の衝動殺人より金が目当てなだけより悪だろうとわしは思う。

それにしても人としての理性の根本を犯した人物を、なぜ政府は善良な国民の税金を浪費して外国にまで調査・情報集めを依頼しなきゃいけないのか、まったく理解に苦しむ。冷たいようだがここは北鮮の拉致被害者とはまったく逆の健全社会への加害者としてはっきりと区別しなければならない。

あまりにもまやかし、錯覚をおこさせるような事柄が多すぎて、食べ物だけではなく人間までが「人間風」になった。

新入社員には幼稚園ごっこから手ほどきしてどうにか企業向きの人間に仕立て直し、使えるだけ使ったらご都合次第で勝手に首を切る。「人は財産」なんて言葉はこの社会から消え去って死語同様になってしまった。そんなためか、世の中で一番先に救済しなければならない犯罪の被害者を放置しておいても違和感も不思議さも感じないアブノーマルな社会になってしまったのだろう

噛みごたえのないマシュマロ風政治家が安易に人道的見地、人権尊重なんて言葉を軽々しく政治的に乱用していると、外人部隊や私設軍隊で悪の権化となることに無上の快感を覚えるような若者を刺激する。生きて帰国すれば当然法の裁きを受けるであろう人物を国が援助することは、憲法改正の布石に利用できるかもしれないが、お互い心して知恵と精神の袋に脱酸素剤を詰め込む時期じゃなかろうか。