自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

49. 隣人は大切に

USAの政経での一極覇権は確実に蔭りが見えてきた。

こんな米国の現状でも必ず最後には助けてくれると信じ込み、「我々とともにアジアの安定を構築しようじゃないか…」という前々からの中国の働きかけにそっぽを向き、その上、中国の嫌うお宮参りをやる。ギグシャクした日中関係の橋渡しをやろうと韓国が乗り出そうとすれば竹島の日制定を承認する。なんやら昔の地主が小作人を虐(いじ)めたような陰険さが臭ってくる。

遠い親戚より大切なお隣さんという平和共存的な古き日本の諺に素直に目を向ける必要がある。世界がドル・ユーロ・中国人民元の三極覇権に動き出している現実を、日米条約を神と崇めて見て見ぬ振りをされたら国民が困ってしまう。

気軽な話し相手もすでになくなってしまい、孤立の想念にふけり、ますます思案を閉鎖的世界に追い込んでしまっているような八方塞がりの日本外交。不透明になりつつあるような日米条約しか頭にないとは正にふん詰まり。

こんな暗いニッポンからスペインへ戻ってきたら「携帯電話でキニエラ(サッカーの賭)も宝くじも買えるよ」と宣伝していた。銀行振り込みとか電車の乗車券としても使えるとか。

なにかゆとりのない実利主義より、携帯で賭け事を楽しむなんて柔軟な発想の方が広々とした明るさを感ずるなあ。その上、先週のバスク地方選ではバスク地方政党に次いで元政権PSOE(社)が前政権のPP(保守)党を押さえて2番目の議席数を勝ち取った。

これには少し説明がいる。

ちょうど一年前の春までブッシュ政権一辺倒だったPP党がマドリー列車爆破テロ直後の選挙戦で破れ、現政権が誕生した。だが世評では爆破テロのおかげで政権が転がり込んだような受け止め方もあった。そこで今回の複雑で地方主義の根強いバスクで躍進した現実は、上記テロのおかげという縁起の悪い夢を吹き払った。と同時に政権の座に着くや素早くイラクから軍隊を引き上げ、米一辺倒を打ち切ってEUの一員として他のEU諸国との付き合いを重視してきた結果、仏独とともにスペインはついにEU内の主要国の座を確保した。

こんな外交転換を国民が支えた証しが今回のバスク地方選の結果となったように思う。

そして、2012年のオリンピック開催都市を決定するシンガポールでの最終投票では、モロッコマホメッド6世やエリザベス女王のパリ支持に負けないよう、国王を引き出してまでも「マドリー開催」を実現させようと明るい熱気に包まれている。

経済力から見ればスペインは日本と比較できないほど小さいかも知れないが、このマイナス要因をもうまくカバーしてEUの枢軸国に躍り出たスペインの外交手腕には、日本外交など足元にも及ばないように思えてならない。