自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

51. 郵便局ではなく学校を

一度夕立が来ただけの5月。乾き切って巻き上げられた砂が雨のように降ってくる台地。押し葉のように色あせたり茶色に変色した野草が、折れたり、お互いにもたれ合ったりしながら造花のように咲き残っている。

スペイン社会もまた政権が交代して1年過ぎ、法改正の厳しいときを迎えたようだ。

電話オペレーター、インターネット関連のプロバイダなどの手数料は高い。たとえばわが家もADSL接続に変更した。24時間使い放題なんだが(日本では当たり前のようだがここにはいろいろなタイプの時間帯がある)速度はたったの 128kbps で月約3千円。その上ルーターを受け取る前に、いままでのダイヤルアップ接続の契約が残っているのに勝手にアクセス不可能にされてしまった。

それ以外にも契約解除がなかなかできない。解除後も請求書がきたり、契約内容が勝手に変更されたりと業者の横暴が目に余る。そのためか、解約は15日以前に通知すればすべた可、を基本として利用者保護の細則を法制化しつつあるようだが…。

生産力を向上させるために、週40時間の労働時間の見直しと失業者減らしとの組み合わせの法制化の模索。東アジアの3分の1以下に落ち込んでしまったEUの造船業。とくにかつての造船王国スペインの凋落は顕著で、EUからの援助金も打ち切られた。そしてついに世界でも指折りの兵器生産国を維持するためか、社会主義の現政権は軍艦を活かし、民間用造船の切捨てへの法制化にも動き出した。その中でも改革の重点として教育問題を前面に押し出してきたことは注目に値する。

教育レベル低下はやはりスペインでも深刻に考えられ始めた。食い止め策としていま浮上しているのは、4年間の中学(小6・中4・高2)で3年生までは追試験を認めず、4科目が不合格(60点以下)だったら自動的に落第。最終の4年生にのみ追試を認める。現在も実施されている教師の定期試験の強化。州のもつ教育権にも国が関与してレベルの均一化をはかる。とくに理数のレベル向上に重点をおく…など。

理数の件では他事ながら以前からわしも気を揉んでいたんだ。足し算・掛け算はできるとしても、引き算・割り算は皆目だめ。ましてや暗算ともなれば32-17なんて庶民には不可能な難しさのようだ。

造形・色彩・五体の表現など感覚的な面では抜群の能力をもつスペイン人ではあるが、もう少し論理性が加味されて、せめて大学生ともなれば講義内容をノートに箇条書きにできるほどになってくれれば、調和のとれた国民性が芽生えてくるだろうと期待している。

中国人の要人が小泉さんをすっぽかした。非礼だ!なんて儒教くさい言葉で格好をつけなくとも外交は先手。先手をとられて手も足も出ない現状をヨーロッパのメディアはしっかりと見抜いている。

皆が、自分の属している集団が「なにかおかしい」のじゃないかと常々漠然と感づきながらも真面目に自分の仕事大事で視野は狭く、直截(ちょくさい)なことにしか手を出さず、思考の拡大ですら抑えて育ってきた社会環境。とくに学校教育制度の欠陥が今日の日本社会のすべての元凶ではないかとわしは考えている。

小中から職業課程以外の高校では、全職業に対応できる一般教養を身につけさせなければならない。こう考えれば一目瞭然。小中としつけ、言葉使いまで義務教育化してしまった今の高校も含め、教師になりえる人材、もっと端的にいえば教師になりえる資格者は自然と限定されてくるはずだ。

身体を守る医者は長い専門教育を受け、しかも誤診をすれば懲罰を受ける。特別専門職と考えられている裁判官が誤診に相当する判決を下した結果、被告だった者が前科を積み重ねるケース。これもまた常識で通用する懲罰を裁判官が受けなければ片手落ちというもの。

医・司法と同様に、専門職としての学校の先生の育成を根本的に見直さなければ、続発する不祥事が減少し、日本社会が立ち直ることはないだろう。

それには共通一次以外の本試験で、教師希望者に英・数・社2・理2の7科目と論文なども考慮して合格を判定し、6年間の専門教育を義務づけるとよい。昔に戻るわけではないが、こうして「先生の言うことなら正しい」と親たちが認めるような教師を専門家として育成優遇することが必須じゃなかろうか。

移行措置として現役の教師には隔年にでも試験を実施し、不適格者は無給で休職させる。教師ではあるがいまはクラスがない。こんなスペイン式の教師がおってもよいと思う。