自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)&その他

23. 内と外の境

アフリカ大陸や東欧からの不法入国者が後を絶たず、そのまま国内に住みついてしまう、いわゆる不法居住者が急増している。

スペインは宗教的に「額に汗して働く」ことは一種の罰とみており、とくに3Kの仕事を嫌うようになったために農園・建築現場などで労働力が不足してきた。この受け皿に目をつけたマフィアが甘言で誘い組織的に不法に送り届けてくるわけだ。とくにムルシア県、アルメリア県の野菜・果実の大供給地はほとんどこれらの人々の労働力によって賄われている。それにEU内では国境も自由に越えれるので、さしあたり加盟国のどこかへ入り込めばあとは何とかなる…ということで、地理的には上陸が便利で、黙認とはゆかなくとも多少受け入れに余裕のあるスペインがターゲットにされているようだ。

早朝に周囲のピソ(=アパートやマンションのこと)のテラスでじゅうたんやテーブルクロス、床モップなどを叩き、打ち振って、ごみや埃を家の外へ撒き散らしている光景。

改築・改造で出るコンクリートや煉瓦などの建築廃材は、捨てるための大型専用コンテナーを施主が金を出してチャーターし近くの道路脇へ置くシステムになっているが、よそ宅の粗大ごみや生ごみであっという間に山積になる。自分の家の中においておきたくない物、ガラクタ、不潔なものなど何でも放り込んでしまう。その光景。チャーターした施主用のスペースなど当然残らないほどだ。

人に見られない夜中にこっそりと捨てにいく人たちはまだしも自分の行為が悪いということを知ってやっている。だから救われるが、真昼間に堂々と染みだらけのマットなどを家族ぐるみで捨てにいく人たちは行為の善悪の判断もできないのだから、どうにも救いようがないように思えてくる。

日常のこんな風景と、あたかも不要なものは捨てさられるようにしてやってくる不法入国者の映像がオーバーラップして内(家)と外との境、国境、男女の境…などなどが次々と頭に浮かび上がってくる。

たしかに世界の動きは異様な要素を境もなく取り込んで調和を保ってゆくホロニックな傾向にある。たとえば大衆音楽のステージでは今はどこの国の人が立とうとまったく違和感をもたせない社会となっており、これなどはホロニックの最先端のように思える。反面、スポーツの世界ではなんか国なんてものを背負うような臭みがあって多少異質で、自分たちに必要な選手だけに境を取り払っているようだ。これは労働者が不足している南スペインの農場で不法滞在を黙認するのと本質的に相違はないようで、ホロニックとはいえないだろう。

都合により自分の枠内に取り込んだり捨て去ったりする発想は、世界の理想的未来の目標として模索している記号論が謳う「人類に関するすべての物事・現象をすべての境を取り払って一定の記号の組み合わせとして把握することにより、すべての領域をなくし、ひきずってきた国家・民族の境もなくそうとする…」ような考えとは正反対な動きのようで、あまりにも政治的(まやかし的)で不愉快さが先に立つ。