自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

57. ゴミあつめ

古今東西、人間生活にゴミはつきもの。この不潔感をともなう不要物をいかに美しく処理してゆくかが人間の美意識の根幹だとわしは信じている。その美意識を満たしてくれ、昔からスペイン社会で感動していることがひとつある。それはゴミの回収なんだ。

スペインの経済力は小さく、日本との比較対象ではないかもしれないが、美意識の発露としてのゴミ回収での取り組み方とその意欲はどう見ても日本よりははるかに高いようだ。

ちなみにわが集合住宅を例とすれば、粗大ゴミ以外は袋に入れて自宅の出入口ドアの外に出しておけば門番さんが回収していってくれる。門番さんの勤務時間の関係上、回収は午後8時頃になるので、その1時間前頃からゴミ出しをするのが習慣化している。

ゴミ袋は市販のものでもそれ以外でも可。量や個数にも制限がない。ただし土日祭日は門番さんも休むので回収してくれない。休祭日にゴミを出したいときは、地上階の道路わきに常備されている専用コンテナーに午後12時までに自分で放り込みさえすればよい。

回収車は毎日来る。大中小があり、階段以外はすべての道路に対応できるようになっている。

コンテナーは緑色は生ゴミ主体の燃焼物用。黄色はポリ・プラ・空き缶などの不燃焼物用と大まかに区別されている。

美しくデザインされた3立方メートルほどの容量のものが緑・黄の一対で、あるいは需要によって緑・緑・黄というふうに生活路に沿って200mほどの間隔ですべての地域に配置されている。少し小型になるが、常住人口10人ほどのいなかの集落でも例外なくみられるところがすごい。

この2種類の基本回収コンテナーのほかに、間隔は3~400mほどと粗くなるが、直径2mほどの半球体のビン用、4立方メートルの紙用と布用コンテナーがセットになって配置されている。

また街路灯の柱、公園、散歩道には市章入りの粋なゴミ入れが50m間隔ほどで設置されている。犬の糞を入れる黒い小型ビニール袋が入った四角な入れものも見られるし、広告板を兼ねた乾電池回収塔もある。その上、交通安全服を着用した道路清掃係がステンレス製の美しいリヤカーとともに道路とゴミ入れの清掃を毎日やってくれる。

ここまでしても、ゴミ回収コンテナーがまちの美観を損なうらしく、目下、コンテナーを道路の下に埋める方式が進行中だ。

一方、帰国毎に厳しくなっていると思われるようなゴミの分別、週に何回と限定されたゴミ回収日に合わせ町角に積み上げネット掛けされたゴミの集積場を見るたびに、これが経済大国日本の姿か? どこか金の使い道が狂っているんじゃあないか?とかなり落ち込んでしまうのが事実だ。そして、日本的な「臭いものにはふた」式の逃げの美意識では、富める低社会福祉国家と呼ばれてもしかたなかろうと思う。

不潔・汚れ・不浄・醜い・弱いを美しく明るく表に引き出す仕事が社会福祉だとするならば、いの一番に避けて通れないゴミをなんとかし、みなに嫌われない清潔で美しい集積場をつくらねば…という前向きの美意識へと意識改革をやることだ。憲法いじりや最新式自動小銃を玩具にしながら援助を要請するような国への援助支出は自重し、小泉さんは絶対多数の威力を発揮して全国津々浦々に経済大国にふさわしい美しいゴミ回収容器を配置してほしいものだ。

世界の国々は、日本という国はこのような基本的社会福祉は一応完成した上で金が余っているから気前よく援助金を出すと思っている。受け取る側の一般民衆がさほど感謝の気持ちを表さないのも道理なのだ。とくに欧米社会では生活の場を美しく快適に保つことは社会の基本という意識が強力だ。だから社会基盤の整備と保持には思い切った支出をする。その上で余力を援助に回す。これを一般に社会福祉先進国と呼ぶ。

臭いもののふたを取り払って、臭いものに真正面からぶつかっていき、それを美しく手直しする美意識の改革こそが、日本が社会福祉国家へ踏み出す第一歩だと思っているんだが、どうだろうか。