自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

65. ジーコ監督は立派だった

さまざまな雰囲気の中で、おそらくジーコ監督自身、自分に対する日本での評価は低下することを自覚していただろう。しかし、選手を枠にはめないで、自由に創造した技を発揮させゲーム展開も選手たちに構築させるーーーこの作戦を最後まで貫徹したジーコ監督の態度は実に立派だった。

ジーコは見せつけてくれたんだ! 家庭の過保護から学校・塾・社会へとすべて与えられたマニュアルに従うことに慣らされてしまい、自発性と創造力を養う努力を怠った若者(中年も含む)の無様な敗退ぶりをーーー。

首相以下、全国民に実像として見せつけてくれた功績は、熱狂させられただけに実に大きいものがあったとわしは思っている。ついでながら、「私の生んだ子だから必ずお父さんよりえらくなる」と聞かされ、萎えた父親を見慣れて育った青年の体力と精神力の弱さも上目遣いで十分見せてもらった。

外国チームでは、選手の個性と独創性をむしろ抑制しながらチームワークに結集させるのが監督の主たる仕事だ。ジーコは「あの高性能な工業製品を造る日本社会で育った選手たちだ。かれらの自主性に任せた方が私がマニュアルを示すよりはきっと好結果を生むだろう…」と過信していたかもしれない。しかし敗因は当然日本社会の不具合にあるんだから、決してジーコの手落ちではないとわしは思っておる。

それにしても、最近に日本社会にはミスや不具合が多すぎるようだ。

週刊誌的に眺めてみても、顧客を泣かせても会社の増益に貢献したと昇進をさせボーナスでも優遇していただろう社員を、一旦その悪事が露顕するようなミスを企業が犯せば即その社員を処罰する不具合。ホリエモン村上ファンド元代表日銀総裁…。この手の事件は、受験競争に勝ち抜いてきただけの連中の傲慢さがたどり着く必然的な結果がついに表に出てしまっただけ。官僚組織の「失敗者を出さない」という運用が不具合者が多すぎて庇いきれなくなってしまった組織的ミス。権威だけで威張って生きられる特殊な日本社会では、盗作画伯や盗作通信記者、論文捏造の学者を生み、ひいては小学生の作文や大学生の安易なコピー(盗作)感を根づかせてしまった大不具合。

ブレア首相は懲りもせず時代遅れのアジア大陸包囲協調策を提案したが、ブッシュに蹴られ、その代わりの人気挽回策で英軍撤退を決めた。自衛隊はうまくそれに乗ったように見えるが、諸外国の評価が低かった陸自を犠牲者が出ない間に引き上げる決定をした。

このブレアに同調したつけを、空自の増派に切り替えブッシュの顔を立てる。相変わらずの追従外交をやったが、これまた大きなミス。訪米土産に危なっかしい牛肉輸入再開を急ぐ不見識。ガセネタなんてやくざ言葉を使う品のない首相を選んだ国民のミス。

靖国だ、竹島だ、、、と国民の危機感を煽り、日米同盟の強化、憲法教育基本法の改悪をもくろむのは見え透いているが、米国の覇権が崩壊し多極化時代の大きな核となる上海協力機構に乗れない与党の体質は大きな不具合を生むだろう。同様、いま世界の目が集中している中南米の反欧米気運の高まりに乗れない外交も大きなミス。

エレベーター事故でNHKラジオで解説した専門家は、事故はコンピュータのバグ bug だと言ったが、これも大きなミス。コンピュータが真空管で作動していた頃、虫が入り込んでショートしたりする不可抗力的な事故をバグと呼んでいた。現在のコンピュータの不具合はほとんどが人為的なミスが原因と考えられるんだから、流行語とはいえバグは心理的にも安易に使ってほしくない言葉だ。

最後に、ジーコさんが言いたかった一言は「マニュアルがないと動けないチームは世界には通用しないよ」だっただろうとわしは推測する。