自笑庵:ともやの時おりおりのメッセージ

HP~スペインの大地とその心を描く~澤口友彌の世界でつづったブログ (2003 - 2011 年)

67. 座席に入りかねる人

例年のことながら、今秋も作品展のために一時帰国のときを間近に迎えている。

少年時代、JR を国鉄と呼んでいたころ、客車には一等、二等、三等車の区別があった。いまの国際線の飛行機がそうで、わしはもっぱら三等席を利用している。

日ごろ画布に向かい座りなれているせいか、ヨーロッパ=日本間は好きな時代小説でも読んでおればいっこうに気にならない。足のむくみはつま先足踏みを2~3分もやれば解消する。ただヨーロッパに入ってからスペイン行きへの乗り継ぎの待ち時間と、その後の2時間半ほどのフライトは中途半端で、僻地(へきち)居住を実感させてくれる。

そのスペインで発着するジャンボではない機内でのことだ。最近、笑えない現象を見かけることが多くなった。肥り気味?で座席にすっぽりと入りかねたり、腹がつかえてテーブルが水平に下ろせなかったりする姿だ。

よくわからないけれど日本での食育は「しっかり食事をする」ことをしつけ教えることのようだが、スペインでは食べ過ぎの肥満予防にやっきになっている。共稼ぎが多くなり食事時間が短縮され、その上既製食品が中心でくだものや野菜を食べなくなって、ケーキや菓子パンに好みが移ってしまったからだ。

日本同様スペインでも食べ物については子供は母親の味と、受け継いだ調理法とその知識を絶対的な権威とするものだ。考えてみれば広い世の中で本物で純粋の権威と呼べるものはこれぐらいじゃなかろうか。

神社仏閣の屋根はサイクロイド曲線とか縄たるみ曲線でできているが、この「たるみ」という余裕のおかげで雨水が一番早く屋根から流れ落ちてくれるようだ。母親はすこし遅れてもサイクロイド曲線の余裕をもって自分の味を子供に受け継がせるという権威を自覚すること。これが子供を立派に育てる最短距離だと理解し、お互いに笑顔を守りあってほしいものだ。

約1年半ぶりの帰国で精神面での食育がどのようにケアされているのか、楽しみのひとつだ。